終末期には自分で希望を伝えられなくなることがあります。おひとり様は代理で判断する家族がいないため、延命治療などの希望を元気なうちに書面で残しておくことが重要です。口頭やメモではなく、公正証書などの確かな形で残すと、医療の場で意思が伝わりやすくなります。
終末期医療とは
終末期医療とは、回復が見込めない状態となり、人生の最期を迎える段階での医療やケアを指します。この段階では、延命を目的とした治療を受けるかどうかという選択が生じることがあります。胃ろう(口から食べられなくなったときの栄養補給)、人工呼吸、心肺蘇生などがその例です。こうした処置を「望む」「望まない」に正解はなく、何を大切にしたいかという本人の価値観によって答えは変わります。
おひとり様が直面する課題
医療の現場では、本人の意思が確認できないとき、家族などの近しい人に方針を尋ねることがあります。ひとり暮らしで身近に家族がいない場合、この確認がうまく進まず、判断が難しくなりがちです。
- 意思の代弁者がいない:意識を失うと、本人に代わって希望を伝える人が身近にいないことがあります。
- 他人が決めることの重さ:身元保証を担う人がいても、命に関わる医療方針を他人が勝手に決めてよいものではありません。
- だからこそ本人の意思表示が要:あらかじめ本人の希望が書面で残っていれば、支援者はそれを医療者に伝えることができます。
事前に意思を書き残す(意思表示・事前指示)
望まない医療を避けるために有効なのが、終末期にどんな医療を望むかをあらかじめ書き残しておくことです。延命のための処置についての希望を、できるだけ具体的に記しておくことがポイントです。
- 延命治療への希望:胃ろう・人工呼吸・心肺蘇生などについて、望むか望まないかを整理しておきます。
- 大切にしたいこと:苦痛を和らげることを優先したい、住み慣れた場所で過ごしたい、といった思いも書き添えます。
- 気持ちの変化:考えは時間とともに変わることがあります。定期的に見直し、必要に応じて書き改めます。
書面はどう残すか
希望は、口頭やちょっとしたメモではなく、確かな形で残すことが大切です。あいまいな形だと、いざというときに医療者へ意思が伝わらないおそれがあります。公正証書などの正式な書面にしておくと、支援者が医師へ本人の希望を確実に伝えやすくなります。あわせて、その書面をどこに保管し、誰に伝えて医療者に渡してもらうかまで決めておくと安心です。
終末期の意思表示は、身元保証や任意後見といった他の備えと一体で考えると、いざというときに機能しやすくなります。「意思を書き残す人」と「それを医療の場で伝える人」が両方そろって、はじめて希望が届きます。
早めに備えることの意味
終末期医療の話題は、つい先延ばしにしがちです。しかし、いざそのときが来てからでは、本人の意思を確認することはできません。元気で判断力があるうちに考えておくことが、望まない医療を避け、自分らしい最期を迎えるための備えになります。難しく感じるときは、専門家と一緒に少しずつ整理していくとよいでしょう。